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/ Gekkan Dennou Club 144 / Gekkan Dennou Club - 2000.5 Vol. 144 (Japan) (Track 1).bin / docs / ex68 / ex6807.doc
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Text File  |  2000-04-06  |  11.4 KB  |  374 lines

  1. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  2.  
  3.         %V%Wモバイル68で行こう!
  4.  
  5.  
  6.             つれづれの7(不定期掲載)
  7.  
  8.                             編集部:あいはら
  9. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  10.  
  11.  
  12.  
  13. <インターミッション>
  14.  
  15.  @NIFTY の FSHARP(シャープ・プロダクツ・ユーザーズ・フォーラム)が取り
  16.  
  17. 組んでいた、シャープ製 X68000用ソフトウェアのフリーソフトウェア化がこの
  18.  
  19. 4月、実現した。本体の ROM、Human68kや SX-WINODWなどの基本ソフト、開発キッ
  20.  
  21. トなどが、順次@NIFTY内で公開されていく事になった。FSHARPの方々の努力には、
  22.  
  23. 心から感謝し、労をねぎらいたい。
  24.  
  25.  本体の「ROM」といえば、EX68に欠かせないものの一つであったが、これが再
  26.  
  27. 配布可能になったことは、即ち X68000本体なしでもエミュレータを動作させる
  28.  
  29. ことができるようになる、という事であり、ソフトウェアに関しては、今後もユ
  30.  
  31. ーザーが比較的安心して使う事ができるという事でもある(そりゃ無敵の「独禁
  32.  
  33. 法違反」ゲイツ様のマシンが要るけれど)。
  34.  
  35.  ともかく、今後どのようなX68エミュレータユーザーが生まれてくるか、それ
  36.  
  37. はそれで楽しみでもあり、電脳倶楽部のユーザーが培ったものを継承する新たな
  38.  
  39. 世代の出現を願いたいものだ。最初は「過去のゲームソフトが遊びたい」という
  40.  
  41. だけのユーザーでもいいだろう。大方は不届き者で終わるかも知れないが、その
  42.  
  43. 中から別の興味を持つ人間が出るに違いない。我々だってモトをたどれば、そん
  44.  
  45. な「へっぽこ野郎その1」だったのではないか?
  46.  
  47.  いずれにしても、XCのライブラリや SCDなど、フリーでEX68上で使えるツール
  48.  
  49. が増える事は、ソフト屋にとってはそれだけでも価値あることだ。ライブラリ等
  50.  
  51. はマニュアルがないのがナニだが(そこは、電クラとしてもなんとかしなきゃい
  52.  
  53. けなかった案件なのだが…、後の祭か)。
  54.  
  55.  
  56.  
  57. <全方位なのである>
  58.  
  59.  さて、本題はそれくらいにして、今月は、サウンド面を攻めることにした。
  60.  
  61.  EX68のアーカイブには、m_puusan氏の開発した X68の内蔵音源エミュレーショ
  62.  
  63. ンのための、X68Sound.DLLファイルが添付されている。これは、EX68など「DLL
  64.  
  65. を利用するプログラム」の付属品としてのみ配布が可能、という条件になってい
  66.  
  67. るようだ。
  68.  
  69.  実際に聴いた感じでは、かなり OPMに近い音が出てくるので、最初にインスト
  70.  
  71. ールした時は非常に驚かされたものである。ZMUSIC 2.0xも(細かいコマンドご
  72.  
  73. とに調べてはいないが)概ねちゃんと鳴っている。電脳倶楽部に掲載した楽曲は
  74.  
  75. 逐一チェックしてきた私が聴いても、かなりイイ線である。まあ、このコーナー
  76.  
  77. は技術面をすっ飛ばした入門的コーナーなので、このドライバの仕組みなどに深
  78.  
  79. 入りするつもりはないが、ソフトウェアシンセの技術は身につけたいものですな、
  80.  
  81. という気にさせる。このあたり、ソフトウェアシンセの基本的な考え方や解説は
  82.  
  83. 舩本君方面にまかすとして、普通に音楽を作ったり鳴らしたりといった実用方面
  84.  
  85. を検討してみよう。
  86.  
  87.  添付されたドキュメントでは、基本的に Pentium II 233MHzクラスの CPUを要
  88.  
  89. するとある。また、Lite版(軽い方)では MMX Pentium 233MHzクラスとある。
  90.  
  91. いまや、ノートPCにも Pentium IIIが載ってしまったりするご時勢なので、まず
  92.  
  93. 性能的問題はないだろうが(ていうか、メビウスPC-PJシリーズの最新版はモバ
  94.  
  95. イルPentiumIIIの500MHzだそうな。うちのマシンも半年を過ぎるが、同じくらい
  96.  
  97. の値段したのになあ、これだから、ゲイツマシンは嫌なんだよな)、要求スペッ
  98.  
  99. クギリギリのマシンでは、やはりそれなりの工夫をしなくてはならない事もある。
  100.  
  101.  特に、EX68の optionメニューを音楽再生用に最適化するにはひと工夫必要だ
  102.  
  103. ろう。
  104.  
  105.  
  106. <いろいろとセッティングには気を使う>
  107.  
  108.  まず、画面描画関係の書き替え速度などを操作したりして、できるだけスムー
  109.  
  110. ズに再生させたい。今回のサンプルでは、55f/s(これは音声を使う場合変更不
  111.  
  112. 可)のチェックボックスをオンにして、書き替え速度は x8に設定し、不要な
  113.  
  114. (グラフィック画面を使った再生ソフトなどは困るだろうが)テキスト以外のグ
  115.  
  116. ラフィック画面などをOPTIONメニュー/DEBUGの項目でオフにした。
  117.  
  118.  OPTIONメニュー/その他の互換/速度の項目は、「VSYNK待ちをしない」のみチェッ
  119.  
  120. クを入れる。純粋に画面書き替えが発生した場合には、これでも落ちるのは避け
  121.  
  122. られないのだが、それ以外の場面で、特にシーケンスの細かいところのモタりを
  123.  
  124. 防ぐには、とにかく55f/s x8のタイミング以外ばっさり動かなくするのがよいだ
  125.  
  126. ろう。あと、ジョイスティックなんかも「なし」でもいいかもしれない。
  127.  
  128.  重要なのが、Windowsのマウスカーソル。これはオプションでもなんでもない
  129.  
  130. が必ずEX68の画面の外に置くようにする。カーソルを動かしたり画面内に置いた
  131.  
  132. だけで演奏がモタりまくるので注意。
  133.  
  134.  シンセサイザの計算自体は、PentiumII 300MHzで余裕で間に合っているような
  135.  
  136. 感じなのだが、いかんせん Windowsみたいな非リアルタイム OSの場合、急な負
  137.  
  138. 荷の上昇に対応してくれないので、モタる事は完全には止められないのだが、ま
  139.  
  140. あモタりが5秒に1回起きるのと、1分に1回くらいまでに抑えられるのとでは、
  141.  
  142. かなり聴いた感じが違うので。
  143.  
  144.  後、あまりやりたくないが、ゲームなど、他のソフトからZmusicを使わないよ
  145.  
  146. うな、純粋に音が鳴ればいいのであれば、画面のプロパティから、ディスプレイ
  147.  
  148. のハードウェアアクセラレーションを完全に切る、などの方法もある。これだと、
  149.  
  150. マウスカーソルをいくら動かしても関係なくなる。
  151.  
  152.  
  153. <ハードに特有の問題に気をつける>
  154.  
  155.  また、Windows上で動いている他のソフトはなるべく外すようにした。もっと
  156.  
  157. も、EX68がほとんどCPUパワーを持っていくので、なんらかの問題が出ない限り
  158.  
  159. はあまり気にすることもないだろうが、自機のメビウスの場合、シリアル系統は
  160.  
  161.  100BASE-TX(LANコネクタ)と USBを同時に使うと不具合のある組み合わせがあ
  162.  
  163. るので、多少気を使ってみた。
  164.  
  165.  
  166. <予想外の問題>
  167.  
  168.  さて、そこまでやって、再生テンポは妥協できるところまで来たとする。
  169.  
  170.  ところが、録音してみると、結構パチパチといった高周波ノイズが発生してい
  171.  
  172. るのだ。デジタルなのに、なんでじゃ~、と思いいろいろ調べてみると、原因は
  173.  
  174. やはりデジタル音声の同期にある事が判明。
  175.  
  176.  USBオーディオデバイス(UA-30)から、S/PDIFのコアキシャルデジタル出力を、
  177.  
  178. DSP FACTORYのS/PDIFコアキシャルデジタルインに入力し、パワーマックのオー
  179.  
  180. ディオシーケンサにハードディスク録音していたのだが、あまりにもクロックに
  181.  
  182. バラつきがあるため、同期ずれを起こしてブチブチいっていたのだ。最初は、ワ
  183.  
  184. ケがわからず困ってしまっていたが、DSP FACTORYは同期を外部クロックで合わ
  185.  
  186. せるセッティングができるので(さすが高級ボード)UA-30側に合わせることで、
  187.  
  188. これでようやくノイズフリーな録音ができた。しかも、音量はかなり自由にセッ
  189.  
  190. ティングできるので、多少元々小さい音のFM曲でも、かなりイイ感じに仕上げ
  191.  
  192. られる、というオマケつき。
  193.  
  194.  まずは、デフォルトのEX68の音というのをフルデジタル録音で聴いてみよう。
  195.  
  196. ◎聴くげま。        TYPE=CDP:6
  197.  
  198.  
  199.  ちょっと解説を加えると、個々のデジタルオーディオ機器のクロックは正確に
  200.  
  201.  44100kHzをきざんでいるワケではない。だいたい、安定しているものでも数Hz
  202.  
  203. ~数10Hz程度の誤差を含んでいる。そういうわけで、1対1の場合はどちらかが
  204.  
  205. どちらかに自動的に追従すれば済むのだけれど、3台以上を直列に繋ぐと(この
  206.  
  207. 場合は、Windows>UA-30>DSPFACTORY>PowerMacという接続になっている)どれ
  208.  
  209. が基準かを決めてやらなければならない。DSPFACTORY>PowerMacの間はソフトウェ
  210.  
  211. ア的にちゃんと調整されているのであまり問題ないのだが、UA-30>DSPFACTORY
  212.  
  213. の間は、ハードでしか繋がっていないわけで、この部分をどちらをマスターにし、
  214.  
  215. 合わせてやらなければならない、ということなのだ。
  216.  
  217.  
  218.  
  219. <純粋に音としては>
  220.  
  221.  松本さんのこの曲を聴いただけではわかりにくいのだが、本物と違うところは
  222.  
  223. あって、ノイズ系の、モジュレータのTLが小さい音や、フィードバックの大きい
  224.  
  225. 音色では多少違って聞こえる。まあ、全く同じ成分のノイズというわけにはいか
  226.  
  227. ないだろうし、再生用のDAでも特性が変わってくる事もあるので、そのあたりの
  228.  
  229. 違いを押さえておけば、EX68の環境でもFM音色づくりやデータ作成が可能であ
  230.  
  231. る、という結論に達した。
  232.  
  233.  
  234. <DSPとその文化的背景>
  235.  
  236.  さて、ついでといってはなんだが、エフェクト周りをちょっと突っ込んで説明
  237.  
  238. しておこう。完全に私の趣味領域なので、嫌な人は、ここらで戻るボタン、じゃ
  239.  
  240. なくて両クリックでさようなら。
  241.  
  242.  
  243. ◎これを聴いてね。(う)        TYPE=CDP:7
  244.  
  245.  さて、これが先ほどのデータにいわゆる「リバーブ」エフェクトをかけたもの
  246.  
  247. だ。これはこれで、なんか面白いと思わないだろうか。かなり質のいいリバーブ
  248.  
  249. なので、これだけでも、FM音源が高級音源の仲間入り、とまでいくかどうかは
  250.  
  251. さておき、十分CDに使える音源になってくれることはご理解いただけたのでは
  252.  
  253. ないだろうか。
  254.  
  255.  実は、少し前にリバーブとかエコーとかの定義の説明を鎌田君にしようとして、
  256.  
  257. あまりに情けない説明をしてしまったので、ここで、もっと砕いてわかりやすい
  258.  
  259. 説明を試みたい。
  260.  
  261.  
  262. ◎これを聴いてにょ。(で)        TYPE=CDP:8
  263.  
  264.  
  265.  さて、これはリバーブエフェクトを構成する音の中で、初期反射音と呼ばれる
  266.  
  267. ものを原音に付け加えたものだ。あまりリバーブっぽくないでしょ。むしろ、
  268.  
  269. 100ms程度のディレイ、といった趣きだ。距離にして約17m先の壁の跳ね返りを表
  270.  
  271. 現するものだ。
  272.  
  273.  
  274. ◎これも聴いてにゅ。(ぷ)        TYPE=CDP:9
  275.  
  276.  んでもって、これは初期反射音+リバーブ音のみを合成したもの。原音はカッ
  277.  
  278. トされている。まあ、これはこれで、ガヤとか遠くで鳴っているSE音なんかに
  279.  
  280. も活用できそうな感じになる。
  281.  
  282.  
  283.  ここで、洗面器を頭上に落とすとしよう。じゃなくて、洗面器に水を張って、
  284.  
  285. 小石でも1セント硬貨でもいいのだが、ポチャンと落としてみよう。波が輪っか
  286.  
  287. のように広がって、洗面器の縁にあたって跳ね返ってくるだろう。このとき、最
  288.  
  289. 初に跳ね返ったものは、逆方向の輪っかの形で跳ね返るだろう。しかも、輪っか
  290.  
  291. 形は残っている。これが音でいうと初期反射音、または一次反射音に相当するも
  292.  
  293. のだ。形が残っている、ということは、原音よりも弱い音だが原音の輪郭がわか
  294.  
  295. る音なのだ。で、原音よりエネルギーは弱くなっているが、形はほぼ一緒の音に
  296.  
  297. なる。つまりディレイ(遅れた音)のように感じるわけだ。また、ディレイは原
  298.  
  299. 音の鳴っている間に重なって鳴る初期反射音を指し、エコーは原音が鳴り終わっ
  300.  
  301. てから、時間を置いて鳴る音、つまり原音と完全に分離している反射音である。
  302.  
  303. エコーとディレイは、原音と分離しているか、していないかの区別であり、現象
  304.  
  305. 自体は、大雑把に言って距離の違いでしかない。
  306.  
  307.  で、洗面器に戻るが、小石の波は縁にぶつかる事を繰り返すと、「輪っかの形
  308.  
  309. がわからない」ぼんやりした水面の揺れになる。これが、余韻であり、リバーブ
  310.  
  311. なのである。室内やホール内では、洗面器の波と同じような物理現象が起きてい
  312.  
  313. るのである、ということなのだ。
  314.  
  315.  さすがに、数学はできないので、式を書くことはできないが、まあ、そういう
  316.  
  317. ことで、反射音と、空間を漂う余韻では、見た目にも違いがある、ということな
  318.  
  319. のだった。この両方を原音と合成して鳴らす事で、いかにも現実っぽい雰囲気を
  320.  
  321. 与えてくれるのがリバーブエフェクトなのである。
  322.  
  323.  なぜリバーブエフェクトが必要かというと、それは気持ちイイから、というだ
  324.  
  325. けではなく、現代の録音環境にあるのであって、ホールやコンサート会場を借り
  326.  
  327. 切って録音を行うようなお金のある人はごく一部で、みんなスタジオのような狭
  328.  
  329. い空間で録音を行っている。それにもお金はかかるし、設備のいいスタジオを誰
  330.  
  331. でもが使えるワケでもない。さらにスタジオの狭い空間の音ばかりでは、リスナ
  332.  
  333. ーの音楽生活に潤いがないであろう。そういうわけで、色々なパラメータ(空間
  334.  
  335. であるとか室温であるとか物理現象を計算に入れたり、ありえない物理現象のパ
  336.  
  337. ラメータ)を駆使しながらエフェクトプログラマは闘っている、のではないだろ
  338.  
  339. うか。
  340.  
  341.  
  342.  てなわけで、お聴かせしたように、世の中には、原音と反射音とリバーブ音を
  343.  
  344. 別々にコントロールできちゃったりするソフトウェアのエフェクタもあるのであ
  345.  
  346. る、という驚愕の事実はわかっていただけたであろう。あれは…いいものだ…。
  347.  
  348. じゃなくて、使い方によっては、非常におもろい効果を得ることができるわけで
  349.  
  350. あり、皆さんもDSPのソフトをつくるならは究極的にそこまで見据えてコーディ
  351.  
  352. ングに励んでいただきたい、と思うのであった。思っただけで終わりか!!!
  353.  
  354.  
  355. <今月のポイント>
  356.  
  357.  あ、EX68で要マウスのゲームをする時などにマウスカーソルのゴミが残ってし
  358.  
  359. まって邪魔な時、DEBUGモードのTEXT画面をOFFにするとよいケースがある。村田
  360.  
  361. 氏の麻雀「じょんぐ」なんかも、マウスカーソルで牌が見えなくなる、なんて事
  362.  
  363. 態がなくなり、これでバッチリ遊べる。EX68で遊んだ中では、一番快適なスピー
  364.  
  365. ドで遊べるゲームなのではなかろうか。もちろん、ゲーム後にはテキスト画面を
  366.  
  367. クリアしてやらないといけないけど。
  368.  
  369.  またまた散漫になってしまったが、今月はこれまで。また来月。
  370.  
  371.  
  372. (EOF)
  373.  
  374.